はじめに
少子化、高齢化問題に向けて、政府によって社会保障改革が急ピッチで進められています。
最近、社会保障改革の一環として、「金融資産等の保有状況を医療・介護における負担に反映すること」について、検討を開始することが政府によって示されました。
金融資産等の運用益で生活費を賄うFIRE(Financial Independence, Retire Early)にとっては、他人事ではないですよね。
この記事では、社会保障改革と、FIRE後の生活への影響について解説します。
社会保障改革について
政府は、社会保障改革として「全世代型社会保障改革」を掲げています。
この全世代型社会保障改革は、厚生労働省により、次のように定義されています。
「人生100年時代の到来を見据え、「自助・公助・共助」そして「絆」を軸に、お年寄りに加え、子供たち、子育て世代、さらには現役世代まで広く安心を支えていく全世代保障の構築を目指します。」
(https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_21482.htmlから抜粋)
これまでの社会保障制度は、主に高齢者を対象としたものであり、現役世代の負担が重くなっているという課題がありました。また、少子高齢化の進行により、社会保障制度の持続可能性も懸念されています。
全世代型社会保障改革は、こうした課題を解決するための改革とされています。
金融資産等による応能負担の導入の検討
それでは、現役世代の負担増と社会保障制度の持続化を、政府はどのようにして解決するつもりなのでしょうか?
令和5年第16回経済財政諮問会議では、その解決策の1つとして、「医療・介護保険における負担へ金融資産等の保有状況を反映すること」が打ち出され、2028年度までの実施に向けて検討を開始することが示されました。検討内容の詳細は、そのときの会議資料に次のように記載されています。
(前略)マイナンバーの導入等の金融資産の把握に向けた取組状況を踏まえつつ、資産運用立国に向けた取組や国民の安定的な金融資産形成の促進などにも配慮しながら、医療・介護保険における負担への金融資産等の保有状況の反映の在り方について検討を行う(攻略)
(令和5年第16回経済財政諮問会議 「資料3 全世代型社会保障構築を目指す改革の道筋(改革工程)について(素案)」から抜粋)
「資産運用立国に向けた取組や国民の安定的な金融資産形成の促進」が「新NISA」を指していることは容易に推測できます。「新NISA」が最初から今回の社会保障改革の目的で導入されたのでは?と勘繰りたくなりますね。
ちなみに、金融資産「等」との表現から、預貯金や株券、投資信託などの金融資産に限らず、金地銀などの実物資産、ビットコインなどの暗号通貨資産なども対象とする狙いが読み取れます。不動産が対象かどうかは不明です。
貯めれば貯めるだけ負担が増えてしまうのか・・・
金融資産等による応能負担を導入する理由
では、「金融資産等の保有状況を医療・介護保険における負担へ反映する」ことが、どうして「現役世代の負担増」と「社会保障制度の持続化」の解決の糸口になると政府は考えているのでしょうか?
そのヒントを、同じ資料の次の記載から読み解くことができます。
(2)改革の方向性や実施における留意すべき点について
(前略)能力に応じた全世代での支え合いをより強化するとともに、社会保障給付の重点化や効率化にもより一層取り組んでいく必要がある。その際、世代間のみならず世代内の公平性を確保していくことが重要である。
また、同時に、市場による働きによって生じた所得分配の歪みに対して、社会保障はより必要な人たちにより多くの所得を再分配する機能を発揮することによって、格差の是正や貧困の解消を図り、消費や「人への投資」を活発にすることができることや、社会保障における給付と負担は表裏一体のものであることについての認識も浸透させる必要がある(後略)
(令和5年第16回経済財政諮問会議 「資料3 全世代型社会保障構築を目指す改革の道筋(改革工程)について(素案)」から抜粋)
つまり、政府は、「市場による働きによって所得分配の歪みが生じている」との前提の下、「社会保障が所得を再分配する機能を発揮することによって、格差の是正や貧困の解消を図る」ことが解決の糸口になると考えているようです。
「市場による働きによる所得分配の歪み」とは投資を意味しているのでしょうか?
いずれにせよ、政府は、社会保障に「所得の再分配の機能」を持たせる予定であることは確かです。
誰かに助けて貰えるから、貯金しなくてもいいよね
頑張って貯めた人が、貯めなかった人を負担するの
なんだか納得いかないなぁ・・・
社会保障改革がFIRE後の生活に与える影響と対策
金融資産等の保有状況による応能負担が導入された場合、FIRE後の生活に与える影響として、以下のものが考えられます。
- 保険料の増加: 金融資産等の保有状況が医療・介護保険の負担に反映されると、FIRE後の人々は、健康保険料、介護保険料、及び後期高齢者医療保険料といった保険料の増加を見込む必要があります。これは、FIRE後の生活費の計算に影響を与えることになります。
- 自己負担の増加: 医療費給付や介護保険給付における自己負担も増加する可能性があります。これは、健康状態や介護の必要性によりますが、FIRE後の人々は、これらの自己負担の増加を見込む必要があります。
- 資産運用の見直し: これらの負担増に対応するためには、FIRE後の人々は、資産運用の戦略を見直す必要があるかもしれません。例えば、より安定した収益を得るための投資戦略を採用する、または、必要な生活費を確保するために一部の資産を現金化するなどの対策が考えられます。
- 生活スタイルの見直し: さらに、生活スタイル自体の見直しも必要かもしれません。例えば、医療費や介護費用の自己負担を減らすために、健康的な生活習慣を維持する、予防医療に取り組む、介護サービスの利用を計画的にするなどの対策が考えられます。
これらの影響は、FIRE後の生活を大きく変える可能性があります。しかし、今のうちから対策を講じることで、FIRE後の生活をより安定したものにできるでしょう。
まとめ
現状では、金融資産等の保有状況による応能負担の検討が始まったばかりで、実際に導入されるかは確かではありません。しかし、予め対策を講じることで、FIRE後の生活をより安定したものにできます。
また、社会保障改革は、FIRE後の生活に大きな影響を与えるものですが、社会保障制度の持続可能性を確保し、全世代が安心して生活できる社会を実現するための改革でもあります。この事を理解し、社会保障改革に適応しておくことが必要だとも思います。
この記事が、皆さんのFIRE後の生活計画に役立てれば幸です。
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